食品ブランド育成術シリーズ 第十話:商品(仮)が最強か、調べ尽くせ⑥ 今すぐ呼べる全国一位を携えて、これから誰に届けるか?
前回の第九話では、「今すぐ全国1位と名乗れる軸」を仮決定しました。厳密に全国1位でなくても、ターゲットから見て「唯一の存在」に見えれば良い、というのが大きなポイントでした。今回は、いよいよターゲットの仮決めに入ります。
ここからさらに具体的になりますが、改めてお断りしておくと、これはあくまで架空の企画です。
▶ 仮の企画:贈答用・高級乾燥湯葉専門店のECブランド(乾燥ゆばセットを入口商品とする)
自社の商品(仮)が最強かチェックするための10個の問い(おさらい)
このシリーズでは、以下の10個の問いに沿って自社商品の可能性を検証しています。ここまでの仮回答も合わせて整理します。
- 自社の商品(仮)は必要とされているか?
→ 関連キーワードやレビューから見ると、「乾燥・高級・贈答」ニーズは確かに存在しています。 - 自社の商品は競合に負けていないか?
→ 実際に食べ比べても、品質面では負けていません。 - 自社の商品の真似できない理由は何か?
→ 豆腐原料の豊富さと製造技術が差別化の源泉です。 - 自社の数値目標達成のために、どのジャンルで1位を目指すのが適切か?
→ お取り寄せの乾燥湯葉カテゴリーでシェア1位を目指します。 - 自社が今すぐ全国一位と呼べるのは、何か?
→ 高級乾燥湯葉を入口とし、乾燥湯葉に覚悟を決めているECブランドとして、おそらく唯一と言えます。 - その今すぐ呼べる全国一位を携えて、これから誰に届けるか? ← 今回はここ
- 今すぐ呼べる全国一位のライバルはいるか?
- 届ける対象と同じ対象にアプローチするライバルはいるか?
- 今のジャンル一位ライバルは?
- ライバルに負けないか?
よく使うターゲットのパラメータ「〇〇のロードマップ」
まず、ワインの選び方ロードマップ(下図)をご覧ください。
- ワイン好きではない:ワインギフトを送りたい
- ワイン潜在層:未来に飲むと買ってみようと思う人
- ワイン入門:実店舗で飲んでみる、もらって飲んで見て、買ってみようか悩む
- ワイン初級(or日用品安定層):価格・量・文言・レビュー・赤白泡・有名銘柄で検索
- ワイン中級:価格/ブランド・国名・品種・(ビンテージ)・味わいで検索
- ワイン上級:価格/価値・多様化・村・生産者・ビンテージ・保管状態で検索
これは食品ジャンルに頻出のロードマップです。特に専門性の高さに差が生まれやすい商材——ワイン・コーヒー・日本酒などの飲料——に適していますが、湯葉でも同様のロードマップが成立します。
湯葉という商材は、「聞かれたら好きな人が多いが、検索する人は少ない」という特性を持ちます。実際に検索するのは次のような層です。
- 飲食店で食べた後に調べてみた入門者
- 一定の周期で湯葉を購入し続けている中級者
- マイブームで頻繁に検索している初中級者
- 長年高頻度で湯葉を探し続けている上級者
そのため、サイトやECページでは、美味しそうな写真や直感的な訴求だけでなく、湯葉の専門的な知識や豆知識・啓蒙的なコンテンツも組み合わせることで、幅広いステージの顧客に響かせることができます。
広告の観点では、次の2種類の組み合わせが有効です。
- プッシュ型広告:乾き物のお取り寄せをする人に湯葉を衝動買いさせる
- プル型広告:湯葉・乾燥湯葉を検索している人にカウンターで出す
用途の切り口
こちらも頻出のアプローチです。
例えば、コーヒーのネットショップにおける用途別ニーズを見ると、ギフトの中では「退職祝い」が他の食品より多いという傾向があります。理由として次の2点が考えられます。
- 退職する職場の上司がコーヒーを飲む場面を目にしやすく、好みを把握しやすい
- 相手に過度な気を遣わせない程度のちょうど良い価格感・汎用性がある
では、乾燥湯葉ではどうでしょうか。ギフト用途を検索ボリュームやレビューから吸い上げ、何が多いか・なぜ多いかを深堀りしてみましょう。そうすると、「贈答用湯葉の入口は○○ギフト」という仮説が立てられます。
ギフト用途入口の注意点
食品ECにおいて、客単価が比較的低い商材(目安として〜7,000円程度)の場合、ギフト用途を入口にするとリピート率が低くなりやすいという点に注意が必要です。
ギフト購入者は「贈るため」に買っており、自分用リピートにつながりにくいためです。そのため広告効率は高まりやすい反面、初回購入で収益を完結させる設計が基本になります。
リピートを狙う場合はサブスクが有効ですが、利用頻度にも注意が必要です。例えば100g×3パックの干し椎茸は、上級者でも使い切るのに半年かかることがあります。
ただし、有効な対策もあります。それはギフトの受取人に対して満足度アンケート(注文用カタログの請求も兼ねる)を送付することです。受取人が気に入って自分で購入するケースが生まれ、新たな顧客獲得につながります。
ターゲット(仮)
上記を踏まえた上で、今回のターゲット仮説は以下のとおりです。
自身も湯葉好きで、湯葉が美味しいという話で誰かと盛り上がったことがあり、ご進物・贈答用に何かを探している人
レビューをざっくり確認した範囲でも、湯葉の贈答商品は他の食品より「オフィシャル感」「品のある印象」が強く映ります。
さらに、「湯葉は相手が湯葉好きという前情報がないと送りにくい」という仮説も立てられます。そのため、買い手自身も湯葉を好んでいるという要件を加えたターゲット像が、このブランドには適していると考えます。
集客→購買までのフロー(仮)
上記ターゲットに基づく集客から購買までのフロー(仮)は以下のとおりです。
- ターゲティング:「ご進物」キーワードで狙い撃ち(集客仮説の1つ)
- ランディングページ:贈答用湯葉を前面に出した入口
- 初購入:自分用の試し買い(贈答前の確認用試し買い専用商品があればなお良し)
- ページ掲載内容:湯葉のシズル感・パッケージの高級感・品質・賞味期限の長さ・ブランドの歴史・口コミ・受賞歴
- 価格設定:送料別3,950円(3,980円は安売りのイメージがあり、高級湯葉の世界観に合わない)・送料は低めに設定
- オプション:自分用試し買いは送料込み1,000円台で小ロットを用意しても良い
なお、ターゲットの仮決めによって、競合の洗い出しも改めて必要になります。例えば「ご進物」というキーワードで検索すると上位に表示される和の高級ギフトブランドも、対象競合の候補に入ってきます。漬物・お茶なども同様の競合候補として挙げられます。この点は次々回のテーマで詳しく取り上げます。
都道府県について(ちなみに話)
完全な仮説ですが、京都・福井・滋賀・静岡・長野は人口比に対する湯葉の対象客比率が高いと考えられます。これらは和食・日本文化への関心が高い地域である可能性があります。
もし実際にこれらの府県から顧客が集まれば、それ自体がブランドの方向性を裏付けるデータになります。
また、埼玉・千葉・神奈川・兵庫は食品ネットショップの顧客比率が人口比で高い傾向があります。収入が安定している世帯が多いことも影響していると考えられます。
まとめ
ターゲットを仮決めすることで、売り方が一気に具体化したと感じていただけたのではないでしょうか。「誰に」「何を」は商売の基本であり、これ以上でも以下でもありません。
ただし、厳密には今回「誰に」が単独で決まったわけではありません。「誰に」と「何を」は本来一体のものです。交互に考えていくうちに、仮説が一定の形を成したとき、この2つが同時に浮き上がってくる感覚があります。脳内では一瞬の出来事です。
「誰に」が先か「何を」が先かという順序にこだわる必要はありません。究極的には「誰に」の優先度が高いですが、縛られすぎない方が良いでしょう。「行ったり来たりすること」「脳内プロセスを完全に分解するのは難しいこと」——この2点を意識するだけで十分です。
また、「誰に」「何を」という仮説の確からしさは、最速でも半年以上、長ければ3年以上の検証期間を要します。重要なのはその後の動き方であり、どんな結果になっても対応できるよう、シナリオをあらかじめ整理しておくことです。
短期的な結果に右往左往せず、プロセスを重視すること——それが長期的な成果につながる姿勢です。
次回予告
食品ブランド育成術シリーズ 第十一話:商品(仮)が最強か、調べ尽くせ⑦ 今すぐ呼べる全国一位のライバルはいるか?
5分でできる To Do
- 自社商品、または競合商品の利用用途の中で、自分がまだ知らなかったものを1つ見つけてみましょう
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「誰に届けるか」が定まったら、そのターゲットに響くウェブサイトを作ることが次の一手です。株式会社ジャッジのホームページ制作サービス「JOSデザイン」では、食品・地方企業・中小企業に特化したサイト制作をご提供しています。ターゲット設定の整理からデザイン・実装まで、一貫してサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
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