食品ブランド育成術シリーズ 第十三話:商品(仮)が最強か、調べ尽くせ⑨ 今のジャンル一位ライバルは?
前回の第十二話では、「同じターゲットにアプローチするライバルはいるか」という問いに向き合いました。ご進物を探している人を取り合う存在として、高級お米・お茶・お線香・スイーツなど、カテゴリーを超えたライバルの存在を確認しました。今回はいよいよ、シリーズを通じて繰り返し登場してきた「ジャンル一位」という言葉の核心に踏み込みます。
仮の企画は引き続き以下を題材にします。
▶ 仮の企画:贈答用・高級乾燥湯葉専門店のECブランド(乾燥ゆばセットを入口商品とする)
自社の商品(仮)が最強かチェックするための10個の問い(おさらい)
このシリーズでは、以下の10個の問いに沿って自社商品の可能性を検証しています。
- 自社の商品(仮)は必要とされているか?
- 自社の商品は競合に負けていないか?
- 自社の商品の真似できない理由は何か?
- 自社の数値目標達成のために、どのジャンルで1位を目指すのが適切か?
- 自社が今すぐ全国一位と呼べるのは、何か?
- その今すぐ呼べる全国一位を携えて、これから誰に届けるか?
- 今すぐ呼べる全国一位のライバルはいるか?
- 届ける対象と同じ対象にアプローチするライバルはいるか?
- 今のジャンル一位ライバルは? ← 今回はここ
- ライバルに負けないか?
「ジャンル一位ライバル」とは何か
ここで言う「ジャンル一位ライバル」とは、自社が狙うジャンル——今回で言えば「乾燥湯葉」カテゴリー——において、現時点でネットショップ流通額が最も大きい競合のことです。
なぜこの存在を特定するのか。理由は単純です。
そのライバルこそが、「このジャンルで勝てば何が得られるか」の現実的な目安であり、「どんな品揃え・価格帯・施策を持てば勝負になるか」の基準になるからです。ライバルを特定しないまま商品設計を進めると、勝てる根拠のない戦いに突入してしまいます。
ライバル調査の4つの視点
ジャンル一位を見極めるための観点は、大きく4つです。
① ネットショップ流通額で比較する(商圏はネット全体)
まず大前提として、比較の軸は「ネットショップ全体の流通額」です。楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングなど、モールをまたいだ合計で判断します。特定のモールだけで強くても、それは一部の話にすぎません。
ネット全体での流通額が最も大きいプレイヤーが、今のジャンル一位です。
② アクセス・売上・レビュー数を確認する
流通額を直接見ることはできませんが、代替指標として「レビュー数」「売れ筋ランキング」「アクセス数(一部ツールで推計可能)」が使えます。各モールのランキングページや、ショップ内のベストセラー表示を見れば、どの商品・どのショップが支持されているかの傾向が掴めます。
③ モールごとに売上を推計する(無料ツールも活用)
無料で使えるツール(たとえばラクダ、Nint、モールの公式分析機能など)を組み合わせることで、ある程度の売上規模を手計算で推計できます。完璧な数字でなくてよい——「桁感」が掴めれば十分です。
推計の基本公式はこうです。
レビュー数 × 客単価 × 100 = 年間流通額(目安)
※レビュー施策あり(記入でポイント付与など)の場合は「×20」で計算してください。
【計算例】
レビュー数:50件(直近1年)
客単価:4,000円
→ 50 × 4,000 × 100 = 2,000万円
これはあくまで目安ですが、競合の規模感を把握するには十分実用的です。「桁違いの相手なのか」「射程圏内の相手なのか」が見えるだけで、戦略の精度が上がります。
④ リピート率・施策・客単価も確認する(今後の伸びしろを判断する)
流通額の「現在値」だけでなく、「今後の伸びしろ」も読む必要があります。
- リピート購入を促す仕組みがあるか(定期便・まとめ買い割引など)
- セール頻度が高いか(低価格戦略で伸びているだけでないか)
- 客単価はどのくらいか(高単価なら少量販売でも大きな流通額になる)
- セット販売の展開はあるか(セット商品は客単価を上げる定番施策)
これらを見ることで、「ライバルが今後さらに強くなるのか、すでに踊り場にいるのか」が読めます。伸びしろのある相手ならば、早めに手を打つ必要があります。
ターゲット視点のライバルとの違いを忘れずに
前回(第十二話)で確認した「ターゲットと同じ対象にアプローチするライバル」——高級お米・お茶・スイーツ・お線香など——は、ジャンルが違います。カテゴリーは異なるが、同じ「ご進物を探している人」の財布を奪い合う存在です。
今回のジャンル一位ライバルは、同じカテゴリー内の話です。
この2種類のライバルは、役割が異なります。
- カテゴリー外のライバル:ターゲットの「選択肢」として競合する(入口商品の訴求で勝つ必要がある)
- カテゴリー内のライバル(=今回):同じジャンルで顧客を奪い合う(品揃え・価格・評価・施策で勝つ必要がある)
両方を意識することで、「誰から買ってもらうか」と「誰に負けないか」の両面が見えてきます。
最終的な1位ライバルを見極めるチェックリスト
ジャンル一位ライバルを特定するにあたって、以下の項目を確認してください。
- 品揃え数は十分か?
- 各モールでの売上規模はどのくらいか?
- レビュー数・評価(星の数・内容)はどうか?
- リピート率はどのくらいか?(リピーター向け施策の有無)
- 販売施策・セール頻度はどうか?
- 客単価・セット販売の状況はどうか?
- 今後の伸びしろはあるか?(成長中か、停滞しているか)
これらを一通り調べると、「このジャンルの現時点での頂点」が見えてきます。そのプレイヤーが、あなたが次のステップで「勝てるか」を検証する相手です。
ニッチこそWebで勝てる
今回の仮企画——贈答用・高級乾燥湯葉専門店——は、全国規模で見れば小さな市場です。しかし、だからこそWebで勝ちやすい。
全国に散らばる「まだ見ぬ湯葉ファン」は、検索して出会うしかない。テレビCMで届けることはできません。ニッチな専門店がネットで強くなれる理由は、まさにここにあります。
ジャンル一位ライバルを正確に把握することは、「その1位を超えるためにどんな武器が必要か」を逆算する作業です。規模の大小ではなく、勝てる根拠を積み上げることが、食品ブランドをWebで育てる近道です。
次回予告
次回・第十四話では、10個の問いの最後「ライバルに負けないか?」を扱います。特定したジャンル一位ライバルに対して、自社が実際に勝てる根拠を検証していきます。品揃え・価格・評価・施策のすべてを照らし合わせ、「勝てる見込みがあるか」「どこで差をつけるか」を具体的に考えていきます。